体の自然な動きを大事にする(前編)

今回のテーマは、いろいろな場所で氾濫しているスウィング理論が、皆さんのゴルフにどのように影響しているかを考えます。

まず最初に、私がトーナメントを回りだした平成8年の出来事です。

ある女子プロのトーナメントの練習日、若手の女子プロとベテランの女子プロが一緒にラウンドしていましたが、途中でベテランの女子プロが若手の女子プロに対してアドレスの姿勢に対してアドバイスをしていました。

ベテランの女子プロのアドバイスは、次のようなものです。

「もう少しひざを曲げて。もう少し、もう少し、そうそう、そのぐらい曲げないと。」

そして若手の女子プロは、「このぐらい曲げればいいんですね」とうなずいていました。

私は、この光景を見て驚きました。

「感覚」は自分で掴むもの

なぜ驚いたかといえば、ひざをどのくらい曲げるかは、本人でなければわからないと思っているからです。

ゴルフのスウィングは、クラブという道具を通じて、からだで生まれた力をボールに加えることと理解しているので、その「感覚」というものは、本人が掴むしか方法がないと思っているからです。

もちろん、「ヒント」としてアドバイスすることは、大事なことですし、それは可能なことです。

それは、パッティングの距離感と同じことです。

たとえば、バックスウィングの大きさで距離が完全にコントロール出来ればいいのですが、1mのパッティングのバックスウィングの大きさは、5mのパッティングの1/5の大きさではないはずです。

少し離れたところにあるゴミ箱に、紙くずを投げる場合、その距離感は「感覚」で投げているはずです。

トッププレーヤーのアドレスを見ると、アドレスでひざが比較的伸びているプレーヤーもいれば、ひざの角度の深いプレーヤーもいます。

スウィングを始めるにあたり、スムースにそしてパワフルに動きやすい姿勢は、それぞれが違った感覚を持っているために、異なったものとなるのでしょう。

ですから、第3者が「あなたの1番力の出るポジションはこういう形です」と断言は出来ないと思います。

つまり、アドバイス出来るものと、出来ないものがあるということです。

「あなたのスタンスは、グリーン左のバンカーのほうを向いています」というアドバイスは有益なものです。

アライメントは、正確なショットを打つために、必要不可欠なものですから。

メディアが出す情報

ゴルフに関する、雑誌、ビデオなどが沢山出版されています。

私が感じるところでは、本来感覚で行わなければならないことが、具体的な言葉で、「こうしなさい」というものがあまりにも多すぎるように思います。

バックスウィングの大きさで、時計の10時の位置なら80ヤード、11時の位置なら95ヤードというものがそうです。

トッププレーヤーのバックスウィングの大きさが全て同じなら、上のアドバイスは有効ですが、どう見てもトッププレーヤー全員のバックスウィングの大きさは、私の目には違って見えます。

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