数年先を見据える一流選手

 写真の戸田藤一郎さんは、すでに亡くなられて大分たちますので、比較的最近にゴルフを始められた人にはなじみのないプロゴルファーです。19歳で日本オープンに優勝し、58歳で関西オープンに優勝しています。この頃は、シニアツアーなどなく、今でいうレギュラーツアーの公式戦である、関西オープンに優勝したのです。160cmに満たない身長で、顔つきがかなり怖かった印象で、気軽に声などかけられない雰囲気でした。

 ある時期に、戸田さんはプロゴルフ協会の運営に関わっていて、経理面で何か不正があるとの疑惑で、一時期試合に出場できない時があったようです。その後、疑惑は晴れて、また試合に出場できるようになって、あるゴルフ記者が戸田さんにもとを訪ねた時、これからの抱負を訪ねたら、「2年待ってくれ、それから試合に出る」という返事だったそうです。その記者は、なぜ2年も待つのだろうと思ったそうです。その後復帰して、活躍されたわけですが、怪我や病気で休んでいたわけでないのに、何故そんなに時間が必要なのか、私もその記事を読んだとき不思議に感じました。

 これと同じような話があります。ジャンボ尾崎さんが、プロ野球からゴルフに転向して、20代半ばから何度も優勝し、トッププロとして活躍していたのですが、30代半ばか、後半ぐらいからゴルフの調子が悪くなり、年間の最多OB数の記事がマスコミに出るなど、不調の時期を過ごしていました。シーズンオフの時にメディアが、ジャンボ尾崎さんを訪ねた時、彼の口から「3,4年後の自分にすごく期待している」と答えたのです。私はその画像を見ていたのですが、強がりで言っている風でもなく、何か自信のように感じがしました。その数年後、ジャンボさんの第2期の全盛期が訪れました。

 いったん崩れたゴルフを立て直すには、短期間では本当に良くは出来ないことを、2人の一流選手は理解していたのです。これは、アマチュアもプロも同じで、いいショットを打ちたい、飛距離を伸ばしたい、などを叶えようとするなら、結果をすぐに期待するのではなく、身につくまでかなりの時間が必要だと言い聞かせるべきでしょう。

 プロツアーを見ると、沢山の若い選手が出てきますが、5年後、10年後にツアーで活躍している選手は、かなり少ないように思います。今は、次々に新しい選手が登場するので、メディアの方はその選手だけを追いかけていればいいのでしょうが、活躍できなくなった選手に目を向けると、色んな原因が思い浮かびます。さらなるレベルアップを目指して、スイングを直したりした後、調子を落とすケースが多いように私は感じます。30年ぐらい前に、プロツアーに行って、クラブを提供しているときに、いろんな場面を見てきましたが、コーチについてスイングを直した後、全く活躍できなくなった選手は大勢いました。その場面は、今も同じでしょう。長期間にわたってスイングを直す、その練習を続ける、その理解がないと、上達は難しいように思います。

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