グリップ(前編)

意外と技術の本質が隠れているのです

ゴルフをやっている人が数人集まると、自然とボールの打ち方(スウィング)の話になることが多いようです。

「この前テレビを見ていたら、石川遼はこうやってボールを打つそうだ」とか、「オンプレーン上にクラブを上げて、そしてそのプレーン上にクラブを下ろせば、ショットは曲がらない」とか議論は白熱しそうです。

そうやってスウィング論を話し合っている人たちを、私は今まで数多く見てきましたが、グリップの仕方について話し合っている人々を見かけたことは、おそらくないかもしれません。

ゴルフを始めて相当の年月が過ぎましたが、今思い返してもそのような光景を思い出すことは出来ません。

皆さんの中にも、ミスショットの原因はスウィングとグリップのどちらに起因している場合が多いかとたずねたら、「実際に身体を動かすスウィングの方でしょう」と答える人が多いのではないでしょうか?

かなり前ですが、ここでベン・ホーガンの言葉を紹介しました。

「ショットの成否は、90%以上アドレスで決まる」というものです。

ショットが上手くいくかどうかは、ボールを打つ前に殆ど決まると、彼は言っているのです。

ショットが上手くいくかどうかについて、スウィングが影響するのは10%未満であるというのが、ベン・ホーガンの意見なのです。

私は、この意見に賛成です。

パワーを生み出すのは、当然ながら人間の身体です。

しかし、ボールを打つのはクラブヘッドです。

そして、その接点はグリップなのです。

せっかく大きなパワーを生み出しても、接点の部分が間違っていれば、大きな力はクラブヘッドに伝わりません。

写真の一番右のグリップは、ジャック・ニクラウスのものです。

左手の中指のコブシがはっきりと見えていますので、左手はかなりかぶせています。

左手の手の甲が目標を指すのが正しいグリップであるという意見があり、実際にそのようなグリップをしている人を多く見かけますが、そのようなグリップをしている人はスライスに悩んでいる人が多くいるはずです。

人間の身体は筋肉の収縮で動かされますので、筋肉は伸びている状態から縮んだ状態になります。

例えば力こぶの筋肉(上腕二頭筋)で考えてみましょう。

腕相撲をする場合、腕を少し曲げて相手と手を合わせます。

腕を伸ばしてしまったり、一番深く曲げたら力が出ないのは体が知っているので、少し腕を曲げた状態で相手に力をかけようとします。

このとき、力こぶの筋肉は中間の長さになっています。

人間の筋肉は、長さが中間の時、一番力が発揮できるようになっています。

筋肉の長さが中間というのは、関節の角度(例えば肘の曲がり具合)が中間の位置になります。

今度は、左手の手のひらを、甲側のほうに大きく回し、次に手のひらの方に大きく回してみて下さい。

何度も回していくうちに、手が回転する角度の中間あたりが何となく分かるはずです。

その手の向きは、上から見ると人差し指と、中指のコブシが見えるぐらいの角度だと思います。

または、握力計を思いっきり握ろうとした時、おそらく先ほどと同じ手の向きになっていると思います。

もし、左手の甲を目標方向に向けたグリップをしている人がグリップをしたまま、写真のジャック・ニクラウスのような向きに左手を少し回転すると、クラブフェースはオープンになっているはずです。

これがスライスボールを生みます。

スライスボールが出る原因は、スウィングではなくてグリップである場合がかなり多いようです(長くなりますので、次回に後半を書きます)。

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