「知識」の弊害

何が技術の本質なのか

ゴルフレッスンに関する本やDVDなどは、あちこちで販売されていますが、それらのものを読んだり見たりして、ゴルフの調子がよくなったという話はあまり聞いたことがありません(というより、今まで一度も私の耳に入ってきたことがありません)。

あのドライバーに替えて距離が伸びたとか、方向性がよくなったという話は聞きますが、あの本のスウィングの解説を読んでから、調子が上がったという話は耳にしないのではないでしょうか。

もっとも、スウィングは短時間でよくなったり、また悪くなるものではないので、理屈と調子の良し悪しの因果関係を把握するのは、難しい面があります。

私の息子は、野球に興味があり大学でも野球をしております。

2人とも、俗に言う「肩が強い」方ではないので、もう少し速いボールが投げれるようになるといいのにと思い、私自身がいいピッチングフォームを身につける練習を2年ほど前に始めました。

自分がある程度経験しないと、なかなかよいアドバイスが出来ないと思ったからです。

速いボールを投げるためには、肘が高く上がらなければならないので、ボールを投げないでフォームの練習を何度も繰り返しました。

肘を高く上げるように何度も何度も練習しているうちに、写真のようにボールを持つ手が手のひらの方に曲がってきました。

全く意識はしていないのに、気が付いたら手首が曲がっていたのです。

日本ハムのダルビッシュ投手や、楽天ゴールデンイーグルスの田中将大投手などを見ても、投球動作に入る時、ボールを持つ手が手のひらの方に曲がっています。

ただ単純に肘を高く上げる動作を繰り返していただけなのに、手首が内側に曲がる非常によい「動き」になりました。

私は、スポーツをやる上で、このことが非常に大事だと最近思うようになってきました。

「こういうスウィングをしましょう」といわれたことを実行しようとするのではなく、凄く単純にボールだけを打つことを繰り返す、そうすることによって本当によいスウィングが身につくものだと思います。

ゴルフを始めた頃は、ボールもよく飛んでいたし、そんなに大きく曲がらなかった、そして1年もしないうちに100も切れたのに、最近は110も打ってしまった、 そのような人はまわりにきっといるはずです。

私のところにレッスンに来る人の半分以上は、そのような人です。

青木功プロは、ゴルフのスウィングについて「上げておろすだけ」とよく言いますが、私もこの意見に賛成です。

ゴルフのレッスンに、オンプレーン上にクラブをあげて、またそのプレーン上にクラブを降ろす、というものと正反対の考えです。

野球の王貞治氏も、バッティングについて「バッティングとはシンプルなものだ」とよく言われます。

現役時代、とことんバッティングを追究した人がたどり着いた結論なのでしょう。

私は、スポーツ科学を少し勉強したことで、例えば右打ちの人がバックスウィングで右の脇を閉めてはいけないことは、筋肉の仕組みから知っています。

しかし、この「知識」がスランプ脱出に4年近い年月がかかったと言えます。

一番大事な「無心」でボールを打つことが出来なく、何か考えながらボールを打つので、当然いいショットが打てなく、また考えてあれこれ試して深みにはまっていく、それの繰り返しをしていました。

考えてスウィングすることが、知らないうちに「癖」になっていたのです。

今スポーツをする上で大事だと思うことは、まずやってみる、そしてやり続けているうちに、分かってくることがある、そのような練習が必要だということです。

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