温故知新11

「物足らない」と感じることの本質とは

「ナイスショットとは、物足らないものなんだよ。」   佐藤精一プロ

佐藤精一プロは、結構馴染みのあるプロだと思いますが、簡単に佐藤プロのプロフィールを紹介します。

1932年(昭和7年)生まれで、千葉県にある我孫子CCクラブで修行され、青木功プロの兄弟子に当たります。

日本プロゴルフ選手権と、日本オープン選手権に優勝されており、文字通りトッププロです。

現在も、アマチュアゴルファーとラウンドしながら教えるレッスン番組に出ておられ、早口とせっかちな教えぶりは、印象に残る人は多いと思います。

佐藤プロのレッスン内容で、よく出てくる指摘の1つに、アマチュアゴルファーがフォロースルーを飛球線方向に振ろうとすると、当然フィニッシュは高くなりますが、佐藤プロは「どうして空に向かってクラブを振るの?」「地面にあるボールを打つのだから、下に向かってクラブを振らなきゃ」と教えます。

全くその通りで、クラブヘッドを飛球線方向に出すと、まっすぐボールが飛んでいきそうですが、実際はそうではないのですね。

「ナイスショットは物足らないもの」とは、本当に意味の深い言葉で、長いプロ生活の中でつかんだ「名言」だと思います。

これと同じ意味の言葉で、ノックアウトで試合に勝ったボクサーのコメントの中に、「軽くパンチを打っただけなのに、相手は倒れてしまった」と言うのがあります。

相手を倒そうとして、力いっぱい打ったパンチではないのに、相手が倒れるのが不思議だ、と言う思いがこめられているようです。

しかし、力いっぱい打ったパンチでは、なかなかノックアウト出来ないのが現実だと思います。

筋肉の性質として、筋肉が早く動ける状態は、筋肉が柔らかい、すなわち力が抜けている状態の時です。

軽く打ったパンチは、力が入ってない状態で打つので、パンチのスピードが速く、大きなエネルギィを相手に加えるから、相手はたまらず倒れてしまうのです。

佐藤プロが言う「物足らないスウィング」も同じで、力が過剰に入っていないから「物足らなさ」を感じるのであって、柔らかい筋肉からスピードのある動きが、距離の出るナイスショットを生んでくれるのです。

逆に、「物足らなさ」を感じないスウィングは、身体に力感を感じて、体中の筋肉が硬くなった状態でスウィングするから、自分の意思に反して身体はスムースに動いてくれなく、距離の出るナイスショットは打てなくなるのです。

ここが、ゴルフおよびスポーツの難しさです。

「物足らない」と感じる動きが、自分の持っている最高のパフォーマンスを発揮出来ている時なのですが、ここを最高と感じれなく、もっと力を入れたら、もっと飛ぶと感じて力んだスウィングを身につけてしまうのです。

何度も佐藤プロの言葉を、呪文のように繰り返し唱えれば、きっと上手くなれるはずです。

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