温故知新3

ゴルフ理論(考え方編)

写真は、私のショップで使っているショットの分析器で、ヘッドスピード、ボールの初速、ボールの打ち出し角度、スライス、フックのスピン量などが測れます。

狭い室内でも、弾道はある程度予測できますので、クラブとその人はがマッチしているかを診断するには都合のよい器械です。

この測定器で、1時間以上ボールを打ち続けている人が時々いますが、その人はいったい何を測定しているのでしょうか。

殆どの場合、ヘッドスピードでしょう。

その人が打っている姿を見れば、容易に判断できます。

ものすごく力んだ顔をして、ボールを打っていますから。そして、そのボールを打ち続けている人に、「調子はどうですか」と聞くと、「だんだん疲れてきて、ヘッドスピードが落ちてきました」という答えが返ってくることが多いのですが、疲れることは確かあるけれど、スピードの落ちた原因は「力み」です。

力めば力むほど、筋肉はゆっくりしか動いてくれません。

 「ボールを遠くに飛ばしたければ、インパクトをゆっくりしろ」    サム・スニード

サム・スニードは1912年生まれのアメリカのトッププロで、全米オープン以外のタイトルを殆ど掌中にした歴史に残る名ゴルファーです。

彼のいった言葉は、簡単に理解できるものではないかもしれません。

当たり前のことですが、 「インパクトをゆっくしろ」とはクラブヘッドの動きをゆっくりすることではありません。

ボールの飛距離は、初速、ボールの打ち出し角度、スピン量で決まりますので、ボールの初速が遅ければ遠くに飛ぶことはありません。

彼の言っている「ゆっくり」とは、インパクトエリアでの体の動き、特に腕の動きを「ゆっくり」しろ、といっているのではないかと思います。

金槌で釘を打つとき、金槌の頭の部分が釘に当たる直前で腕の動きにブレーキをかけますが、それは腕に発生している運動量(重さ×スピード)が、金槌の方に移行して、金槌の頭の部分が加速されて釘が打ちやすくなります。

ゴルフのスウィングも全く同じで、インパクトの直前で、クラブを持っている腕や体の動きのスピードが抑えられると、クラブヘッドが加速されるという現象が生じます。

ただ人間は、ヘッドスピードを上げようとすると、クラブを持っている腕を速く振ろうとする傾向がかなり強いようです。

私自身も、3年近く前に「いい球」を打つためにヘッドスピードを上げる練習を始めました。

体を軟らかく使って、下半身のリードでボールを打つことでした。

練習を始めて7,8ヶ月たってから初めてヘッドスピードを計ったら、自分の予想を越えるスピードが出て、そのうちにもっとスピードが出るのではないかと思って練習を続けているうちに、知らず知らずのうちに腕に力を入れて振っていたのです。

そこから、2年以上にわたる大スランプが始まったのです。

力を抜いてクラブを振ることを念頭に置いて練習を始めた人間が、もっとヘッドスピードを上げようとした瞬間に、腕に力を入れて腕でクラブを速く振ろうとしたのです。

サム・スニードは自分の経験から、飛ばそうと思えば腕に力が入ってしまうので、「インパクトをゆっくり」という表現で、腕の動きを早くしないようにしたのでしょう。

そして「インパクトをゆっくり」して、ロングドライブを放っていたのでしょう。

スポーツは感覚的にするものですから、昔の名手の言葉を理解することによって、技術の本質をつかめるように思います。

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