今の女子プロゴルフトーナメントを見ていると、20歳前後のプレーヤーが多く優勝しています。はっきり調べてわけではありませんが、10年ぐらいか、もう少し前からその傾向にあるようです。以前にも、YOu Tubeで話したか、この四方山話で書いたかもしれませんが、30年かそれ以前ではあまり見られなかった現象です。ボールのコアが硬くなり、飛距離が出るようになって、そして曲がり幅も少なくなったので、プロの試合に出れるレベル、つまりパープレーでラウンドできる技術を身に着けるに必要な時間が、30年ぐらいと比較すると短時間になったと思います。
パープレーでラウンドするために、必要とされる「技術」は多くあるのかと言えば、私はそれほど多くないように感じます。例えばスティンガー(すごい低弾道のショット)が打てなくてもそれほど困らないでしょうし、フィル・ミケルソン選手が時々見せる、近い距離からとやや離れた距離からのロブショットも、打てれば武器になりますが、絶対必要かと言えば、そのようなショットが要求される場面はそう多くないはずです。
クラブフェースの芯でボールが打てて、普通のピッチショットやランニングアプローチが打てて、パットが普通のアマチュアより上手くなれば、パープレーでラウンドできるようになります。いま、そんなスコアでラウンドできない人から見れば、「そんな簡単ものか」と反論されると思いますが、クラブを始めて握ってから1年ちょっとで、パープレーでラウンドする子供は大勢います。ここで大事なことは、彼らのほとんどは細かく技術の事は考えてないで、コースでプレーしていることです。目の前にあるボールを、打ちやすいように打っているのです。「打ちやすいように打つ」という事は、体に負担のかからない「動き」、すなわちしっかり手を伸ばそうとか、下半身を止めて上半身をしっかり回そうとか、そのようなことはしないで、楽に打つことに意識を置いているはずです。
以前、ハンマー投げの室伏さんが現役のころ、「楽をして投げる」フォームが大事という事を言っていました。また、ホームランをたくさん打った王貞治氏は、「スイングはシンプルなものなんだ」と仰っていました。「楽(らく)」と「シンプル」が、スポーツの技術の本質を表していると、私自身感じています。今名前を出した室伏さんや王貞治氏が、20歳ぐらいの時の技術に関する理解と、現役時代の最後の方の、技術に対する理解はかなり違うはずです。両氏は、ハンマー投げやバッティングに対して、本当に深く考え、またものすごい練習を重ねて、選手としては高齢の時に素晴らしい記録を残してきました。技術の本質を深く理解したからこそ、体力が衰え始めた年齢でも、必要な技術と、体力低下を補うトレーニング(単なる筋肉を肥大させるものではない)で偉業を達成したのでしょう。
新しい選手が次から次へと出てくるので、4,5年前に活躍していた選手がテレビに映らなくなってしまっても、多くの人は気がつかないかもしれません。私の場合は、常に打ち方(技術)に注目しているので、少し前に活躍していた選手の現在が気になります。今は本当に便利で、You Tubeで特定の選手の今や数年前のスイングを簡単に見ることができます。現れて、少ししたら消えていく選手ばかりでなく、ある程度長い間活躍する選手を、1人でも多く見たいと思います。「本物」の技術を追求したいというのが、これからも続けていく自分にとって「大事な作業」です。