前回のテーマについて、少しお問い合わせがありましたので、もう1回私見を述べたいと思います。
ウッド、特にドライバーは、ヘッドの大型化に伴い慣性モーメントが大きくなって、ボールが曲がりにくくなりました。
写真は、私が長い間使用したパーシモンのドライバーですが、このクラブに比べたら、現在の大型ヘッドの方が、フェアウェイにボールを落とすのは、容易であることは言うまでもありません。
また、スウィートスポットから外れた場合、パーシモンの方が曲がりが大きく、また、飛距離のロスも大きくなるので、スウィングの精度は、パーシモンの方が高く要求されます。
青木選手が嘆いている「パワーオンリー」とは、少々スウィングの精度が荒くても、「力任せ」で、そして慣性モーメントの大きなクラブに助けられて、遠くにボールを飛ばした人がアドバンテージを取る、現在のゲームのあり方を憂いているのでしょう。
野球の絶妙なルール
野球について考えてみましょう。
ご存知のように、プロは木製のバットで、アマチュアは金属のバットを使用しています。
半世紀以上前と比較しても、大きく変わったことはないのではないでしょうか。
ピッチャーのプレートからホームベースまでの距離や、ベース間の距離も変わっていません。
道具自体にも、大きな変化はないようです。
だから、去年イチロー選手が打った安打記録が、過去に樹立された記録と比較して、意義のあるものとなったのです。
私にとって、野球を見ていて一番ドキドキするプレーは、セーフティーバントや内野安打です。
ボールを追って内野手が全力でつっこんでくる、バッターはセーフにするために、こちらも全力で走る、そのダイナミックでスピーディーな動きにスリルを感じます。
ホームランという大技だけでなく、セーフティーバントという小技で観衆を魅了するから、多くの人がスタンドまで足を運ぶのでしょう。
もし、内野手をあと2人足したら、どうなるでしょうか。
おそらく、セーフティバントを試みる選手はいなくなるでしょうし、内野安打などもめったに出るものではなくなるでしょう。
そうなると、外野へのヒットか、ホームランでないと点が取れなくなります。
すなわち、長距離打者が重宝され、きっと大味なゲームになるのでしょう。
野球の長い歴史の中で、現在の9人で守る形態が、いちばん「おもしろい」ゲームになることがわかって、現在に至っているのでしょう。
自分に合ったクラブ選びを
ゴルフの世界は、この10年から15年ぐらいで20ヤード近く飛距離が伸びて、コースの難易度が変わってしまいました。
ニック・プライスが言うように、パーシモンのウッドにした方が、ほんとの技術の差が明確に現れるので、テレビを見ていても、奥深い面白さを感じる気がします。
パーシモンに戻すことは不可能としても、ナイスショットとミスショットがはっきり現れるクラブのほうが、観ていてスリルを味わうのではないでしょうか。
新しい素材や、製造方法で飛ぶクラブをつくることは、メーカーの技術開発力を向上させるので、どんどんやるべきでしょう。
前回お話したように、プロや公式の試合には、厳しいルールのもとで、飛ばないクラブで勝負をして、競技志向でないアマチュアは、飛ぶ道具を使ってゴルフを楽しむべきだと思います。